2年目の井達です。今回は10月12日、当社にてALPS SOUTH 日本事務所の松本さん、ALPSアドバイザー竹内さんをお招きし、義肢装具士学会でも紹介されていたセミナーを実施しました。
モデルには当社義足ユーザーT様にご協力頂き、ALPS社の吸着式義足懸垂装置「Vacuum Integrated Pump(VIP)」、足部「BioStepTM EVO」「RFX補強型フレックススリーブ」を使用し、採型から仮合わせまで行いました。
義足の懸垂とは、義足はそのまま履くだけでは脱げてしまうため、様々な方法や装置を使用して義足が脱げないように固定します。今回使用したVIPは吸着式といい、ソケット内の空気を逃がしソケットと断端を密着させて、スリーブを使用し空気の流入を防ぎ、義足が脱げないようにします。
最初に断端の評価から行います。骨の位置や傷、赤くなっている部分などをT様にもお話を伺いながら確認します。同時に、ライナーのサイズ選択も行います。ライナーは断端の周径をもとに、実際の装着感をユーザー様と確認しながら決めます。
断端の評価、ライナーのサイズが決まったらいよいよ採型です。初めに竹内さんの採型方法を見て、当社の義肢装具士5人も採型をし、同じように採型を行っているつもりでも、各々手の使い方や巻き方、採れたモデルの形に違いがあり、採型時の注意点等を確認し合いました(実際にT様に感想を伺ったところ、全員何かしらが違うかなとおっしゃっていました)。
採型が終わりモデルを起こしたら、修正に入ります。脂肪や筋肉などの体重をかけていい部分を削り込み、傷や骨の部分など負担をかけてはいけない部分には石膏を盛り足します。削り方や石膏の盛り方でモデルの形が大きく変わってしまうため、採型者の感覚や経験値、観察力に委ねられる工程です。
修正後、チェックソケット(評価用の透明なソケット)を作り、パーツを組み上げたら仮合わせです。実際に義足を履いて歩いて頂き、義肢装具士の視点とユーザー様の意見をもとに、義足を調整していきます。ソケット内の形状やねじの締め具合でバランスや歩きやすさが変わってしまうため、細やかな調整と観察力が必要です。新しいパーツを使用した義足を装着したT様も「とても歩きやすい」「長時間付けていられる」とのお話を伺い、自然な歩き方で、歩幅も大きく、歩く速さに変化がありました。
今までALPS社の義足用パーツを使用する機会は少なかったため、今回のセミナーで使用した一例ができ、パーツの特徴や使用感が分かりました。紹介できるパーツの幅を拡げることは義肢装具士として必要なことだと再認識し、ユーザー様がより快適に義肢装具を使用できるよう知識・技術をアップデートしていきたいです。
今回ご協力頂いたT様、ALPS SOUTH日本事務所の皆様、本当にありがとうございました!